成年後見の落とし穴


こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。

 

民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。

 

この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。


【本日の話題】

認知症になってしまった場合、その人の財産を管理する制度として「成年後見制度」があります。

 

しかし、これはあまり使い勝手の良い制度ではない為、弊所では「家族信託」や「任意後見」をお勧めしています。

 

成年後見制度を利用するとどうなるのか、理解して認知症になる前に対策を考えてください。



成年後見人が必要になる場面

よくあるパターンが、銀行に本人の認知症を知られた場合です。

(窓口で、ついそのことを話してしまった。本人が、銀行で認知症とみられる言動をした。・・など)

 

認知症の方は、”事理弁識能力を欠く状態”であると見做されます。そのため、本人や家族の意思でお金をおろしたりすることができなくなります。

=口座の凍結

 

この凍結を解除して、お金を使えるようにするためには、代理人として成年後見人を決める必要があるのです。

 

銀行としては、認知症のことを知った後で後見人以外の請求に応じた場合、トラブルに巻き込まれる可能性があるため、口座を凍結してしまいます。

 

後見人は誰がなる

成年後見人は、家庭裁判所で指定されます。候補者として、家族を届け出ることはできますが、過去に家族の後見人によるトラブル(使い込み等)が多発したため、現状は弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家が選ばれることが多いです。

(全体の7割程度は専門職後見人)

 

後見人がついた後は

親が認知症になって、成年後見人に専門職が就くと家族の視点ではこうなります。

 

・「この度、成年後見人に選ばれた司法書士の◯◯です。つきましては、お母さんの通帳を全部出してください。」と言われ、通帳を全部持っていかれます。

 

・その後は、後見人の管理する金銭を使うときは、全て後見人にお伺いを立てることになります。(後見人は、財産の管理につき裁判所に報告する義務がありますので、理由がはっきりしていないと支出することはできないのです。)

 

 「お母さんの医療費を払ってください。」

 「お母さんの施設利用費をお願いします。」

 

・例えば、元気な時に「孫が大学に行くときは、学費は全部出してあげる。」と言っていたとしても、それを実現することは不可能になります。

 

後見人の立場になれば、これを支払いが必要な費用であることを裁判所に証明することは難しいですよね。後見制度は、被後見人(認知症の親)の財産を守るための制度ですから、被後見人のためにしか使えないのです。

 

・例えば、アパートを経営していて、老朽化していて大規模修繕(費用2000万円)をしたい場合。後見人がこれを出すのも、上記の理由から難しいでしょう。

 

投資的なお金は出せなくなるのです。

 

報酬について

成年後見人に専門職が就くと、報酬が発生します。およそ年額24万円~60万円ていどになることが多いようです。

 

これが、被後見人が亡くなるまで続きます。10年にすると240万円~600万円にもなります。途中でやめることはできません。

 

認知症になる前に

家族信託を設定しておけば、本人が望む(信託目的)財産の使い方ができます。家族が他人にお伺いを立てる必要もありません。

 

信託設定時に費用は掛かりますが、スタートした後は家族で運営しますので、特に報酬というものも発生しません。

 

なにより、本人の希望をかなえることができるのです。

 

ただし、認知症になってからでは、法律行為(信託の契約や遺言の作成等)ができませんので、元気なうちに自分の財産の使い方を家族信託で決定してください。


こちらも御覧ください。

なぜ信託を勧めるのか。

スライドで説明します。

9分31秒