こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。
民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。
この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。
【本日の話題】
民事信託(家族信託)をするためには、元手となる信託財産を設定します。
受託者は、自分の財産とは分けて管理運用しますが、どのようなものが信託財産になるのでしょうか。マイナスの財産や、信託財産の運用によって発生した債務はどのような扱いになるのでしょうか。
【信託財産の範囲】
信託法16条-信託行為において信託財産に属すべきものと定められた財産のほか、信託財産に属する財産の管理、処分、滅失、損傷その他の事由により受託者が得た財産及びその他信託財産に属することとなった財産も含む。
信託財産は、委託者の財産から分離可能な管理承継できる価値のある財産とされます。したがって、信託財産は信託財産は積極財産に限られ、消極財産は含まれません。
とすると、ローンが残っている自宅を信託財産とした場合、信託財産からローンの返済をすることができなくなってしまいます。このような場合は、「信託財産責任負担債務」として信託で定めることができます。これにより、受託者は家のローンを信託財産の金銭等を使って支払うことができるようになります。
信託財産責任負担債務には、このほか受託者が信託事務について生じた債務などがあります。
【責任財産限定特約】
信託財産責任負担債務は、状況によっては受託者固有の財産をもって責任を負うことがあります。しかし、この受託者の無限責任を信託財産のみに限定することが、信託法で認められています。
信託法21条2項4号-受託者と信託債権者との間で信託信託財産に属する財産のみをもってその履行責任を負う旨の合意がある場合は、受託者は信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う。
原則として、信託事務として行った取引から生じる債務については、受託者は信託財産のみならず固有財産によっても履行責任を負います。しかし、常に受託者の責任を固有財産にまで広げると、受託を躊躇する事態になりかねません。債権者の合意を得られるようなら、この限定特約の活用が活きてきます。