こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。
民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。
この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。
【本日の話題】詐害信託は取消しの対象
民法424条により、債務者の詐害行為に対し債権者の取消権を定めています。
詐害行為=債務者が債権者を害することを知ってした法律行為
例)借金があるのに、全財産を他人に贈与して返済ができなくなる。
信託でも、委託者の悪意により、債権者を害することが考えられますが、当然債権者に対抗措置が認められています。ただし、民法の世界の詐害行為とは登場人物が違いますので、信託特有の取消権となります。
【信託法11条1項】
委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害すべき事実を知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法424条1項の規定による取り消しを裁判所に請求することができる。
信託の場合、債権者が訴える相手は信託契約により信託財産の名義人となっている受託者となります。
【信託法11条4項】
委託者が債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から財産の給付を受けたときは、債権者は受益者を被告として、詐害行為の取消しを裁判所に請求することができる。
受益者が、給付を受けた場合は、受益者を被告としますが、受益者が詐害の事実を知らなかったときは、すでに給付を受けた分については請求できないことになります。(同項但し書き)
【何を取り消す?】
信託の設定そのものを取り消すものではありません。
債権者は、債権者が有する非保全債権の範囲で、債務者たる委託者がした信託の設定のための財産の処分を取り消すことになるとされています。
例えば、信託する金融資産が5,000万円の場合に、非保全債権が2,000万円であれば、2,000万円について受託者への財産移転行為を取り消すことになります。
信託を設定することで、委託者の財産ではなくなるという信託の特徴を悪用する行為は認められません。いわゆる「倒産隔離機能」という言葉が独り歩きして、誤解されている部分がありますが、債権者を害するような信託は考えないようにしましょう。