こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。
民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。
この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。
【本日の話題】
中小企業の企業承継が危機的状況になり、後継者不在の廃業が急増している状況を打破するため、自社株譲渡が非課税となる特例が施行されています。
2023年3月までに届け出をすることが条件ですので、後継者選定は待ったなしです。
後継者をお試しできる、信託活用方法とは・・・
事業承継とは、株式会社の場合は株式を後継者に移し、議決権を持って会社の経営をできるようにすることです。上場されていない中小企業の場合、株式を現金化することはできないのが通常ですが、評価額をもとに贈与税などが課税されます。
上記の特例を利用すると、贈与税が0円になりますので是非活用したいものです。
しかし、株を譲渡すると後継者にすべての権利が移動します。きちんと経営できれば問題ありませんが、そうでない場合やり直しは出来ません。
【後継者を受託者にして経営をやらせてみる】
Aさんは、長男Bと次男Cのどちらかを後継者にする予定です。しかし、両名とも経営者としての資質があるのか不安があります。長男で問題なければ長男に継がせるのが円満な解決法ではあります。
そこで、Aさんは自社株を信託財産として信託契約を組成しました。
委託者:Aさん 受託者:Bさん 受益者:Aさん
株主名簿にも記載され株主となったBさんは、議決権を行使して会社の経営を実際に行います。
委託者兼受益者のAさんは、重要な決済に対する指図権を設定しておくことで、重大な間違いは回避できるようにしておきます。
Bさんの経営が順調にいけば、信託を解消して自社株を完全に贈与します。税法上はこの時点が課税ポイントになりますので、2023年3月までに信託終了できれば、特例を活用できます。
もし、Bさんが経営者としての手腕が無いと判断される場合は、信託を終了し新たにCさんを受託者として新たな信託をスタートさせます。Cさんの経営能力を試してから、最終的にどちらを後継者にするか決定をします。
委託者と受益者は、合意によって信託を終了させる権利がありますので、このようなことが可能となります。実際にやらせてみないと分からないことはありますので、後戻りができる次自社株信託は有効ではないでしょうか。