こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。
民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。
この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。
【本日の話題】
80歳の一郎さんには、一人息子の二郎さんがいましたが事故で亡くなりました。そのため、一郎さんの相続人は孫の三郎さん一人となります。
しかし、三郎さんはまだ未成年ですので、相続後はその財産を管理するのは、法定代理人(親権者)の一子さんになります。
実は、一子さんは浪費家で一郎さんとも仲が良くありません。一郎さんは、三郎さんが相続するのはいいのですが、一子さんに無駄遣いされてしまうことが心配でなりません。
【制限行為能力者】
認知症の方は判断能力が不足しているとして、契約などの法律行為は法定代理人である成年後見人に代理してもらわなければなりません。
実は、未成年者も同じように法定代理人に代理してもらわないと、法律行為ができません。
未成年者も認知症患者も制限行為能力者ということになります。
未成年者の法定代理人は、親権者(通常は親)がなります。三郎さんの場合は、母親の一子さんが親権者であり法定代理人ということになります。一郎さんが亡くなり、財産を三郎さんが相続すると、その管理,処分は一子さんがすることになります。
あくまでも三郎さんの財産ですので、母親とはいえ自分のために使うことはNGですが、それを制御できるものではありません。一子さんが財産を食いつぶす危険もあるのです。
【信託して受託者に管理してもらう】
委託者:一郎 受託者:信頼できる親族 受益者:三郎
遺言信託を設定し、一郎さんが亡くなると財産は信託財産となり受託者の管理下に置かれます。一子さんが、親権を理由に過分な給付を請求することも考えられるので、受託者には一子さんに対抗できる人を選定します。
信託の期間は、三郎さんが大学を卒業するころに設定して、十分な教育が受けられるようにしておきます。信託終了後は、財産の所有が完全に三郎さんに移りますが、成人していますので一子さんに取られることは無いでしょう。
この場合は、受託者の人選がポイントです。一子さんから、様々な要求が懸念されますので、もし親族に一子さんに対抗できる人がいない場合は、専門家を受益者代理人として設定するなどの工夫が必要になります。