こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。
民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。
この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。
【本日の話題】
民事信託(家族信託)と任意後見は補完しあう関係でもあり、同時に成り立つ制度です。
しかし、後見制度の中でも「成年後見」はどうでしょうか。
これは注意しないと、いけません。成年後見人から家族信託を壊されてしまうこともあるのです。
【任意後見と成年後見(法定後見)】
任意後見は、本人の判断能力があるときに、本人の意思で設定できます。後見人や後見の内容を本人が決めるのです。
対して、成年後見は本人の判断能力が認知症などで失われた後に設定される後見です。本人の意思は確認できませんので、裁判所の管理のもと厳しい制限のある財産管理が行われます。後見人は裁判所が選定し、後見の内容は裁判所が認める範囲に限られます。
【家族信託との関係】
家族信託を設定したときに身上監護の必要性があるときには、同時に任意後見を設定します。両方ともに、本人の意思に基づいて組成しますので、万一認知症になったときに支障が出ることはありません。
対して、成年後見は本人の意思と関係なく設定されますので、場合によっては本人の意思によって設定された民事信託(家族信託)が成年後見人によって壊されてしまいます。
【遺言信託】
信託は、契約・信託宣言・遺言の3つの方法で設定できます。遺言で信託を設定した場合には、遺言と同様に死亡したときに効力を発生します。
成年後見人は、本人のために財産管理をしますが、信託財産として指定してあるものを処分してしまうことがあります。すると、信託財産が無くなりますので信託目的を達成することができません。
信託目的を達成できない=信託が成り立たない
家族信託は、出来ないことになってしまいます。
【成年後見人の意志で信託終了】
成年後見人が信託を終わらせることがあります。
信託は、委託者と受益者の同意により終了することができます。
委託者と受益者が同じ「自益信託」の場合は、元の所有者の一存で終了できるのです。
ところで、成年後見人は法定後見人として本人(被後見人)を代理して法律行為をすることができます。自益信託の委託者兼受益者の法定代理人として、信託契約を終了させることができるのです。
成年後見制度は、本人の保護のための制度ですので、家族信託を終了することが本人のためになるという理由があれば、合法的に信託終了を出来るのです。
例えば、信託により財産が本人以外(孫の教育費など)に使われる場合、理由付けは可能です。信託設定時の本人の希望より、現在の本人の保護が優先されてしまうのです。
そして、成年後見人の報酬は管理する財産の額によります。専門職の成年後見人が信託を終了し、本人の所有財産に戻ると財産額が増えますので、成年後見人の報酬が増えるのです。
上記の2例とも、信託組成時に成年後見の設定が予想される場合には、しっかりとした対策を得おくことが必要になります。