事業承継の3パターン


こんにちは、「民事信託・相続コンサルタントしゅくわ事務所」

代表の宿輪です。

 

弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。

 

少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「信託情報」では、皆さんに知っていただきたい信託の知識をランダムに解説しています。ぜひお役に立ててください。

 

弊所では、民事信託(家族信託)を専門的に取り扱っています。遺言などこれまでの民法では解決できなかった問題がクリアにできます。☞に小冊子ダウンロード版を用意していますのでご利用ください。

 

民事信託を勧める理由を、スライドを使って説明してみました。☞のユーチューブ動画も見ていただけると嬉しいです。

 

では、信託情報をどうぞ! 


現在、中小企業経営者の平均年齢は60歳を超え、事業承継は緊急の課題となっています。

 

しかし、今後10年間で70歳を超える経営者約245万人の約半分の127万人は後継者が決まっていません。

 

事業承継には後継者の能力、人選、税金など、たくさんの問題を時間をかけてクリアしなければなりません。

 

民事信託の効用を活用すれば、多くの問題は解決できます。それぞれの状況に合わせ、信託をデザインしますが、大きく分けて3ターンの信託が考えられます。



①後継者に経営させる

   委託者:社長

   受託者:後継者

   受益者:社長

 高齢となった社長の負担を軽減しつつ、後継者を育てる信託。

 

 社長の持つ自社株を信託財産とします。

 後継者は受託者として、自社株の議決権を行使し会社の実権を握ることになります。

 株主名簿には後継者の名前が記載される。

 受益権は元の所有者のままですので、贈与税は発生しません。

 社長が亡くなったときに相続税が発生します。

 万一、社長が認知症などになっても実権の行使には支障が出ない。

 社長に自社株の指図権を設定すれば、元気なうちは社長の影響力は保持される。

 

②株価の低いうちに株を渡したい。

   委託者:社長

   受託者:社長

   受益者:後継者

 

 今後利益の積み重ねが予想され株価が高くなる会社の場合、①の信託では相続税が高くなってしまいます。今のうちに贈与して、経営実権の移動はもう少し先にしたい場合は、このパターンが使えます。自己信託と言われる信託で、委託者が受託者となり受益者を設定することになります。

 

 受益者に贈与されたものとみなして贈与税が発生。

 社長は、受託者として会社の経営を継続。

 社長が亡くなったときには、相続税の対象にはならない。

 

 このパターンでは、後継者の経営能力が心配なくなったら、社長と後継者の合意により信託を終了し、会社の実権を移動することになります。

 

③一旦後継者に贈与する

   委託者:後継者

   受託者:社長

   受益者:後継者

 

 中小企業のほとんどは、株式の配当はありません。そうすると、受益権が設定されていてもほとんど利益は無いということです。ですから②のパターンの場合、後継者から見ると「議決権はないし、利益もない」≒「今までと変わらない」と感じられます。それで、後継者と自覚した仕事を期待されても、難しいという人もいるでしょう。その場合、このパターンが考えられます。

 

 社長から後継者に自社株を贈与または売却します。

 その後、後継者が委託者となり自社株を信託財産として、信託を設定します。

 会社の実権は社長が行使することで、経営の安定を図ります。

 受益権は後継者になっていますので、相続の問題は発生しません。

 

【信託終了の注意】

 信託法により、委託者と受託者が同意すれば信託を終了することができます。

    委託者  受益者

 ①  社長   社長   社長1人で終了できる

 ②  社長   後継者  社長と後継者の合意で終了できる

 ③  後継者  後継者  後継者1人で終了できる

 

③の場合、後継者が信託を終了させてしまえば。完全に会社の実権が移動してしまいます。

事業承継をどのパターンの信託で進めるかは、しっかりと検討する必要があります。