こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。
民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。
この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。
民亊信託(家族信託)で税金はどうなる?
財産を信託財産とした場合、所有者は存在しません。
財産が移動したときの税金は、所有者となった者が負担するのが原則です。
民亊信託(家族信託)では、受益者を信託財産の所有者とみなして課税されることになります。
【相続税と贈与税】
家族内で財産の移動がある場合に考えなければならない税金として、相続税と贈与税があります。それぞれ移動する財産の金額によって税率が決まりますが、贈与税の方が高率です。
親から子に1000万円贈与した場合 特例贈与税 177万円
親から子に1000万円相続させる場合 相続税 0円(相続税基礎控除以内)
生前贈与をせずに相続発生まで財産を持ち続ける人が多くなります。
このため、所有者の認知症などにより財産が凍結するなどの問題が発生することになります。
1人当たり2500万円までは贈与税が非課税となり、相続時に精算できる「相続時精算課税制度」もありますが、こちらの利用もあまり多くはありません。
民亊信託(家族信託)を利用すると、財産の名義は受託者となりますが、受託者は所有者ではなく財産から利益を受けることもできません。利益を受ける権利を持つ受益者が税務上は所有者とみなされます。
税務上みなされるだけで、所有者ではないのです。
認知症対策として、委託者が受益者となる「自益信託」であれば、税務上の所有者は変更有りませんので、課税されることはありません。
委託者が受託者となり、受益者に給付する「自己信託」の場合には、名義人は変更ありませんが、委託者から受益者に所有者が変更されたものとみなされますので、贈与税が発生します。
【所得税】
信託財産から収益が発生する場合、不動産所得となります。その所得は、受益者の所得として課税されます。
信託不動産を売却して所得が発生した場合、譲渡所得が発生します。これも、受益者の所得として課税されます。
【固定資産税】
固定資産税は、登記上の所有者に課税されます。
原則では受益者課税となりますが、地方税法により名義人に課税されることになっています。
【登記関連の税金】
不動産取得税は、受託者への名義変更や受益権の移動に関しては非課税となります。
信託財産の受益権を相続人以外に移動しても非課税となります。信託の変更登記となりますので、登録免許税が1000円だけかかりますが、不動産取得税はかかりません。
所有者変更の登録免許税は、
相続による変更 0.4%
その他(売買、贈与等) 2%
ですが、信託による受託者への所有者欄の変更は0.4%になっています。
このように、大きなところでは税務上は受益者=所有者と考えますが、細かいところで違う見方をされる場合もあるということになります。