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受託者の競合行為


こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。

 

民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。

 

この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。


 賃貸不動産を持つ委託者が、高齢になり管理が難しくなってきたため、民亊信託(家族信託)で楽隠居をしたいと考えました。

 

 長男も賃貸経営をしているため、長男に受託者をしてもらえば、安心して任せられます。

 

 しかし、受託者の忠実義務を厳密に守ると、長男は自分の不動産経営より父親から信託された不動産経営を優先させなければならなくなります。

 

 これでは、長男は受託者を引き受けてくれるか分かりません。

【競合行為の禁止】

 受託者の競合行為は、受託者の忠実義務に反するとして原則禁止です。

 

 信託法32条1項

「受託者は、受託者として有する権限に基づいて信託事務の処理としてすることができる行為であってこれをしないことが受益者の利益に反するものについては、これを固有財産又は受託者の利害関係人の計算でしてはならない」

 

 委託者は、長男が不動産経営をしていることで、その知識経験を活かして信託事務をしてもらうことを期待して受託者としました。長男は、自分の不動産経営と信託財産の不動産経営をすることになります。

 

 信託がスタートした後、利回りのいい収益不動産の情報が長男意入りました。長男は自分の事業としてこの不動産を飼いたいのですが、受託者として買えば受益者の利益になります。これが競合行為となります。これを全て禁止される=自分の事業より信託財産の利益を卯羽扇させなければならないとすれば、長男は受託者を辞退するかもしれません。

 

【競合行為の対策】

 条文を読むと、受益者の利益に反する行為を禁止していますが、この判断はなかなか難しいです。

 

 上記のように優良物件を長男の事業として購入することが、受益者の不利益になるか否かは一概には言えません。どのような競合行為がNGなのかを明確にする必要があります。

 

 信託法32条2項に競合行為の例外規定があります。

 ・信託行為に許容の定めがあるとき

 ・重要な事実を開示して受益者の承諾を得たとき

 

 信託契約書に、「受託者は、自己の計算において、不動産の賃貸、売買を行うことができる」と定めをすると、競合行為が認められることになります。

 

 しかし、競合行為を許容する定めをしたとしても、受託者の忠実義務や善管注意義務に反することは許容されません。受託者の競合行為が予想される場合には、それを想定した行為の可否を記載したり、受益者の承諾を必要条件として付けるなどの対策が重要になります。