こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。
民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。
この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。
信託の期間は、さまざまですが受益者が若年である場合など、長期にわたる場合があります。
信託期間中に、予期していなかった事態が発生した場合、信託が続けられなくなると受益者を守ることができなくなってしまいます。
信託法では、一定の制限の範囲内での変更が認められますので、状況の変化に対応できることになります。
【変更の必要性】
旧信託法は、商事信託前提のものでしたので、その管理方法に関してのみ裁判所に変更の請求がされるとしていました。しかし改正信託法は、家族の信託を考えた作りとなっており、委託者及び受益者の利益を確保するために、信託の内容全般について変更できるようになっています。
立法者の補足説明「今日の経済社会にあっては、信託がなされた時点においては予想できない生じることもあり得、そのような場合において、信託の変更が柔軟かつ迅速にされ得ないときは、委託者の意図する目的を達成することができないこととなるばかりか、受益者の利益にも資することができないものと考えられる。」
商事信託では、営業として顧客の財産を運用しますので、契約の変更には厳しい制限が必要ですが、家族で運営する信託を考えると、柔軟に対応できたほうがいいという判断です。
【信託変更の制限】
民事信託(家族信託)の変更は、原則、委託者・受益者・受託者の三者の合意によりできます。終了の場合は、委託者・受益者の二者の合意ですから原則的に違います。
信託が終了すれば、受託者は任務終了(清算事務は必要)しますが、変更の場合には変更した内容により受託者の任務は続くのです。金銭管理だけだから引き受けた受託者に、不動産管理をさせるのは困難です。受託者が合意できるものでなければならないということです。
【委託者の合意がない信託の変更】
民事信託の場合、委託者は高齢であることが多いです。ですから、委託者が合意の意思を示すことができなくなることもあります。(認知症・死亡など)
この場合、委託者の意思は「信託目的」が代替するということになります。委託者は意思表示できませんが、信託目的に従っていれば委託者も合意するものとして対応することになります。信託目的は民事信託(家族信託)の憲法のようなものですから、組成の場合には慎重に検討してください。
また、信託目的に反せず「受益者の利益になることが明らかな変更」については、受益者の合意も不要となります。受益者も意思表示が難しい場合もありますので・・
法律上可能とされていても「信託目的に反しない」とか「受益者の利益になることが明らか」という条件は、判断が難しい場合もありますので、三者合意がない変更というのはハードルが高いです。
【受託者の合意がない信託の変更】
受託者の利益を害しないことが明らかなときは、受託者の合意なく変更が可能とされています。例えば、受益者の意思決定方法についての定めがある信託において、これを受益者間で変更問するような場合です。受益者間で変更して、受託者に通知することで変更となります。
信託の変更においても、別段の定めができます。
・変更の際は専門家に委任する
・通知義務を免除する
・原則委託者の同意を要しないとする・・・など
個別の状況に合わせて定めることも可能です。