こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。
民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。
この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。
おひとり様も民事信託(家族信託)で安心
一人暮らしの高齢者が急増しています。
厚生労働省作成の「高齢社会白書」によると、65歳以上の一人暮らしは、1980年に88万人だったところ、2015年には593万人となっており、2040年の予測は896万人となっています。
一人暮らしでも、頼れる親類がいる方もいますが、親せき付き合いもなく、面倒なことを頼める人がいない方も増えているようです。
いわゆる「おひとり様」の問題です。
【おひとり様】
・ずっと独身だった。
・結婚はしたが、子がおらず配偶者に先立たれた。
・子はいるが、離れて暮らしほとんど交流がない。
このような方を、一般的におひとり様と呼んでいます。
おひとり様でも、親せきと良い関係があれば、死亡した後の面倒な手続きや財産処分に関して、きちんと話して対策できます。しかし、頼れる親族が身近にいない方もたくさんいます。
頼れる親族が身近にいないおひとり様が、何も対策せずに亡くなると、大変な状況になります。尊厳ある最期を迎えるためには、自分の財産で死後事務や祭祀を行えるように準備しなけばなりません。
【死後事務委任契約】
人が死亡した後、まずは緊急にする必要のある事務として、葬送があります。身元引受人が決まっていないと、遺体の火葬にも時間がかかります。
遺体の引き受けや、死亡届の提出、火葬許可の申請、葬儀、火葬、納骨など死亡直後の事務から、その後の祭祀に関することを依頼するのが「死後事務委任契約」です。
身内に頼める人は、費用を賄えるだけのお金を渡して、お願いすることになります。
親族などに頼める人がいない場合には、専門家と死後事務委任契約を締結し、希望に沿った死後事務を依頼することができます。
【死後事務委任の費用】
死後事務には、葬儀など多額の費用が掛かるものがありますし、事務の履行は相当な労力が必要となります。通常は親族がすることを、他人である受任者が失効しますので、親族の中には受任者に対し嫌悪を感じる方もあるでしょう。その中で依頼者の希望に沿った死後事務や祭祀を執行するのは大変なことです。そのため、専門家としての報酬は相当な金額となります。
依頼者の希望によりますが、100万円~300万円の見積もりになることが多いです。
しかし、これをしておけば、付き合いのない親族に面倒なことを頼まずに済みますので、精神的に非常に楽になります。自分の財産で、自分の後始末を済ませることができるのです。
【費用の渡し方】
高額な費用であり、契約から執行まで期間があるので、費用の受け渡しをどうするかが問題となります。
①先に受任者に預託する。
〇確実に受任者が受け取れる。 ✖受任者の横領、死亡などのリスク。
②依頼者が、死後事務委任用に分別して保管する。
〇受任者によるリスクがない。 ✖金額が足りなくなるリスク(生活費で使ってしまう)
③死亡保険金で費用を賄う。
〇多額の現金が不要 ✖保険会社の対応がまちまち
等の方法がありますが、一長一短があります。
【民事信託(家族信託)で金銭管理】
死後事務及び祭祀に係る金銭を信託財産として、民事信託(家族信託)を組成することができます。信託であれば、希望通りの死後事務の履行を担保するために、個別にチェックや報告義務を付けることも可能です。
死後事務は専門家の受任者にまかせ、親族(法定相続人等)は受託者として報酬や費用の支払いをするだけにすれば、受託者の負担も少なく済みます。遠くに住む子でも就任しやすいのではないでしょうか。