長崎は、坂の街と言われます。
坂が多く、自転車が使えないから、長崎の人は自転車が乗れないなんて言ううわさもあります。
階段で家まで歩くしかない家も多くあります。高齢になると、階段が歩けなくなり空き家となります。そしてその空き家を相続すると、相続人は処分をしなければなりませんが、再建築できない土地では、売却はほぼ不可能です。
災害の原因となる、特定空家としないためには、解体撤去が必要ですが、数百万円の費用が掛かります。
増え続ける斜面地の空き家を減らすために、信託はどのような活用方法があるでしょうか。
【売れない実家の相続】
長崎県では、特に長崎市と佐世保市に斜面地住宅が多くあります。
また、離島については過疎化のスピードが速く、相続で取得した空き家の売却が困難となっています。
なんの対策もなく相続が発生した場合、下記のような流れで危険な特定空家となると考えられます。
1.葬式などでお金が掛かるので、預貯金だけ相続手続きをして不動産は後回し。
2.三回忌が終わったあたりで、不動産を何とかしなければと考えだし、遺産分割協議を始める
3.不動産屋などに相談し、売れないことを確認する。
➤解体撤去には、300万円ほどの費用が必要で、更地となるため固定資産税が高くなる。
4.負動産で誰も欲しくないため、協議は難航
5.空き家の期間が長くなり、管理不全空き家として市から勧告を受け、固定資産税の減免がなくなる。
6.危険な特定空家となり、行政代執行で撤去され、相続人に費用が請求される
このように、売れない空き家の相続は、相続人(兄弟)間の関係悪化の原因にもなってしまいます。
【売れない実家が、危険空き家となる原因】
売れない実家を相続した場合に、下記のような理由で処分が遅れるものと考えます。
1.高く売れると思わないので、処分を急がない
2.評価額が低いので、固定資産税の金額が少なく、あまり負担に思わない。
3.お金を掛けられないので、荷物の整理が進まない。
4.処分に掛かる費用を想定できていない。
5.処分を検討する段になって、費用が高額になることを認識する。
6.処分費用が無いため、解体撤去工事ができない。
7.管理不全空き家となり、最終的な処分を考えざるを得ない状況に追い込まれ、相続人間の争いや不仲になる。
8.相続人の関係が悪くなり、合意形成が困難で解決が長引く。
相続人全員が(又は被相続人が)お金をかけてでも空き家の処分を急ぐ気持ちを持っていれば、早い段階で空き家の撤去が可能になります。当然、費用をどのようにするのかを決めなければなりません。
【令和5年 国庫帰属が可能になった】
相続した実家の不動産を使えない場合、市町村に寄付しようとする方もいますが、不動産の寄付はあまり受け付けてもらえません。
空家のまま維持するために、結構なお金を費やしている人は多いです。
令和5年に、相続した土地を管理できない場合、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえる制度が始まりました。
境界が明確、土壌が汚染されていないなどの条件がいくつかありますが、宅地であれば建物を撤去して更地にすれば、国庫帰属の要件を満たすことができます。
空家を撤去して国に引き取ってもらえば、その後の管理はしなくてよいことになります。後は、行政が防災などを考慮した管理や活用をしてくれることになります。
【建物撤去を信託で実施】
建物と預貯金を信託し、子供が管理します。
親の生活環境を守るため、信託財産を使います。親が施設に入るなどで空き家になったとき、受託者は処分方法を探ります。
安く売れないか?低い家賃で貸せないか?等。
建物が使えないとなれば、管理不全空き家となる前に信託財産を使って建物を撤去します。
受託者は、更地の処分を検討します。安く売れないか?家庭菜園用地として貸せないか?等。
更地としても処分ができない場合は、相続発生時に土地を相続した者が、国庫帰属の手続きを取る。
こうすることで、一番のネックであった撤去費用は信託財産(親のお金)でできるので、タイミングを逃さず近所迷惑な空き家になることを防げます。土地の国庫帰属にも費用は掛かりますが、それほど高額ではありませんので、相続したお金を使ってすることができます。
日本の人口は減り続けています。
子供が住まない実家は、処分をしなければ空き家になります。
利活用が可能であれば、しっかりと管理して、資産の有効活用を図りますが、それが無理であれば国庫帰属までの道筋を想定した家族の信託を検討してはいかがでしょうか。