高齢者の詐欺被害は、認知症の診断を受ける前が要注意。
高齢者をターゲットにした詐欺的商法の被害が増えています。
先日テレビで紹介されていたのは、判断能力の低下した高齢者に親切を装い近づき、ほぼ無価値の不動産を購入させるという手口です。一度、被害に遭った高齢者は、「かもリスト」に載り、財産が底をつくまで騙され続けるようです。
ポイントは、被害者は認知症の診断を受けていないと言いう事。
所有者の意志で契約し代金を支払った場合、それが詐欺的な内容であっても、被害を救済することは困難です。また、認知症手前のMCI「軽度認知障害」からは、財産管理は難しい状態の様ですので、被害を避けるには認知症になる前から使える「家族の信託」が有効です。
高齢の親が一人暮らしをしている場合には、真剣に対策を考えなければなりません。
【お子様のために】
世の中には「一人暮らし高齢者」などの名簿が出回っているそうです。
悪質業者は、これを使い電話をかけ、判断能力の状態を探ります。
「以前、ご訪問させていただき、仕事がんばれよと声かけ頂きました。覚えておられますか?」などに「覚えています。」などと答えると、”判断能力低下しているけどそれを知られたくなくて話を合わせてくる”と判断され、ターゲットになってしまいます。
その後、自宅に来て「財産の有効活用。値上がり間違いなしの土地です、お子様のためにお金を増やしましょう。」などと、価値の低い不動産を購入させます。一度被害に遭うと、「あの業者は悪徳なんですよ。被害を回復するためにこちらの不動産を購入しましょう。」など財産がなくなるまで被害が続きます。
【所有者の意志】
不動産の売買では、双方がある程度知識があるものという前提の法体制となっています。実際には、なんの知識もなく言われるがまま印鑑を押してしまったとしても、代金を支払ってしまった後で取りもどすのは非常に困難です。契約時点で、認知症の診断が出ており、意思能力が無かったことを証明できる場合に限られます。
所有者は、財産の処分権限を有していますので、合理的でない契約であっても自分の意志で契約すれば有効な法律行為となります。
実際には、被害者のほとんどは認知症の診断は受けていませんでした。認知症であっても、医師から認知症の診断を受けている方は少数派です。後見の申し立てや施設の契約など特別な理由が無いと、診断書までは作らないのではないでしょうか。
【財産管理を代わってもらう】
財産管理能力の低下した高齢者の被害を防ぐには、財産管理を代わってもらうのが確実です。お金が無ければ、騙されて支払うことを回避できます。
財産管理を代わってもらう制度としては「後見制度」と「民事信託」があります。
後見制度には「任意後見」と「法定後見」があり、移行型の任意後見であれば、認知症になる前の財産管理委任契約をセットにすることで、認知症になる前の対策もある程度可能になります。しかし、財産は本人名義のまま受任者として管理するため、本人の処分(預金の引出など)を制限することはできません。通帳・印鑑を預かったとしても、本人が通帳を紛失したとして再発行することはできますので、本人が支払ってしまうリスクは少し残ります。
民事信託では、受託者名義の口座に預金を移動しますので、本人がその預金を引き出すことはできなくなります。本人は受益者として受託者に金銭を請求することができますが、受託者がその内容を確認し、信託目的に適合しない場合には給付しません。
騙されて、不動産を契約しようとしても、受託者が支払いをしませんので、被害発生を食い止められます。
【判断能力の衰えを子供に知られたくない】
性格にもよると思いますが、判断能力が衰えてきたと自覚したとしても、子供や周りに言わない方も多いようです。
・子供に心配かけたくない。
・子供に弱みを見せたくない。
・年だから当たり前のこと。
・認知症ということで差別を受ける。騙される。
・ボケてるなんてみっともない。人に知られたくない。
子がたまに帰省したときには、上手く取り繕い何とかやり過ごし、子供が気付くのは相当に症状が悪化してからということになります。
上記の理由などで、親の方からも言いづらいので、子供の法から面倒な財産管理を代わってあげることができることを話して、被害者となる前に対策を講じられるようにしましょう。
高齢になれば、心身の衰えは当たり前のこと。恥ずかしいことではありません。
昔は、元気なうちから隠居(家督相続)して、財産管理から解放されることができました。家族の信託で、穏やかな隠居生活を考えてもらってもいいのではないかと思います。